胃癌の原因と治療法を
医師が解説｜
消化器・内視鏡のクリニック

胃がんとは

胃がんは、胃粘膜から発生する癌です。2019年の統計によれば、胃がんは男女ともに3位の死亡原因です。胃がんは、胃の粘膜から増殖し、進行していきます。増殖したがん細胞は徐々に胃壁の奥深くに侵入し、さらに進行すると血管やリンパ管を通じて他の臓器に転移します。また、がんが胃の外側に広がると、胃に接する大腸や膵臓、腹膜などに直接浸潤します。さらに、腹腔内にがん細胞が広まると、腹膜播種という状態になります。

胃がんの多くは腺がん（胃の粘膜細胞から発生する癌）であり、その組織型は分化型と未分化型に大別されます。分化型は進行が緩やかである一方、未分化型は進行が速い傾向があります。また、胃がんにはスキルス胃がんというものも存在し、このタイプは粘膜の表面に変化をほとんど見せず、胃壁の内部で進行し硬くなる特徴があります。スキルス胃がんは予後が悪い胃がんとして知られています。

胃がんの主な症状

早期の胃がんでは症状はありません。進行がんでも必ずしも症状が現れるわけではありませんが、みぞおちの痛みや不快感、違和感、胸やけ、吐き気、食欲不振などの症状が出る方もいます。進行したがんでは徐々に出血量が増加し、便が黒くなったり、貧血が進行してふらつきを感じることがあります。しかし、早期の胃がんでは症状がないため、ピロリ菌の指摘で胃カメラ検査をして見つかったり、胃がんとは別にたまたま症状があって、偶然発見されることや、定期的な検診によって見つかることもあります。

胃がんの原因は？

胃がんの主な原因は、ヘリコバクター・ピロリ（ピロリ菌）の感染です。ピロリ菌は幼少期に口から胃に侵入し、胃粘膜に感染します。その後、毒素を分泌し、胃粘膜に慢性的な炎症を引き起こします。慢性胃炎が長期間続くと、胃粘膜はダメージを受けて萎縮性胃炎となります。萎縮性胃炎は、がんの発生リスクが非常に高まる状態です。ただし、ピロリ菌感染だけが原因ではなく、高塩分食品の摂取や喫煙なども胃がんのリスク要因とされています。したがって、ピロリ菌感染に加えて他の要因も考慮する必要があります。

胃がんの治療

胃がんの治療方法は、早期がんと進行がんでは大きく異なります。まず、胃カメラ検査によって胃がんが発見された場合、がんの大きさや形状、粘膜の状態、どのくらいの深さまで影響しているかなどをよく観察します。それにより内視鏡で切除が可能な早期がんなのか、外科的手術が必要な進行がんなのかを判断します。また、胃カメラ検査の際には、がん細胞を一部採取して組織検査も行います。さらに、がんがリンパ節や他の臓器へ転移していないかを確認するために、腹部超音波検査や造影CT検査などを行います。転移が確認され、高い転移リスクがある場合には外科的手術や抗がん剤による化学療法が選択されます。転移がない、または転移のリスクが低い場合は内視鏡による治療が選択されます。（内視鏡治療後に転移が発覚した場合は、追加の外科的手術が必要となる場合もあります。）

よくある質問

• 胃がんの末期症状を教えてください。

  末期には食事が摂れなくなったり、体重が減少したりすることがあります。転移した臓器によっては痛みを感じたり、お腹に腹水がたまったりすることもあります。

• 胃がんのステージはどのように分けられますか？

  胃の粘膜から発生したがんがどのくらいの深さまで影響しているか、リンパ節や他の臓器への転移があるかどうかで、ステージ分けが行われます。

• 胃がんは転移する病気ですか？

  はい、胃がんは血管やリンパ節を通じて遠隔転移することがあります。がん細胞が胃壁を越えて直接隣接する大腸や膵臓などに浸潤することもあります。